アメリカ人の心のひだをサム・ペキンパー監督が見事に描いた現代西部劇の傑作「華麗なる挑
戦ジュニア・ボナー」がTVで放映されて、スティーブ・マックィーンの素晴らしさを改めて認識されたファンも
多かろう。日本語版の出来も上々で、特にマックィーンを吹き替えた内海賢二さんの努力は見逃せない。
マックィーンの声優となると、TVシリーズ「拳銃無宿」の頃から長年、宮部昭夫さんが吹き替えていたが、「シ
ンシナティ・キッド」「ジュニア・ボナー」と近頃は内海賢二さんもアテてきた。そこで今回は躍進めざましい内
海さんの登場である。「マックィーンを初めてアテたのが確か『荒野の七人』でした。彼はやりにくいなあ。
声にあまり特徴がないというか、抑揚がない、ボソボソとしたしゃべり方でしょう。その上黙っているポーズや姿
がいいときてるもんだから、吹替えは苦労します。特に「ジュニア・ボナー」は夢を追い求めている西部男とい
う役柄でむずかしく、今までのマックィーンとは離れてやってくれというプロデューサーからの注文で、失われつ
つある人間の詩情を出すのに苦労しました。語尾をソフトに、そして甘いムードの中に男らしさを盛り込んだり・
・・ でもジュニア・ボナーは個人的に好きなタイプの人間だし、西部劇も大好きだから、やりがいがありましたね。
しかもペキンパーの映画は好きで全部見ているんです」「ジュニア・ボナー」での並々ならぬ苦労を述懐する内海
さんは、ヒゲがよく似合う、逞しい男性である。声が太くて、よく響く。マックィーンに劣らず野性的で、ふくよ
かだ。「マックィーンは人間味がすごくあるでしょ。表には出さず、クールだが暖かみがあるんで、変に声で芝居
をすると、彼のムードがこわれるのではないかと心配。彼の吹替えはやりにくい反面、やりがいがあるんでこれか
らもアテてみたいなあ」
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