796. 若い人たちにはピンとこないかもしれないが、中年以上の世代にとって「ル・マン」と言えば映画「栄光のル・マン」ということになる。
この映画は1971年に公開されたアメリカ映画で、主演はスティーブ・マックイーン。戦後から高度成長期に時代が移り、日本自体に活気があった時期でもあり、またブーム好きの日本人気質にもあったのか、この映画は日本でも大ヒットとなった。
この映画はレースにこだわりを持っていたスティーブ・マックイーンの情熱によって製作されたもので、実際に1970年のル・マン24時間レースの現場で撮影が行われたという。
実際にレースに参戦していたポルシェ908にカメラを積んで撮影もされ、もちろんル・マン参戦ドライバーをはじめとする大勢のレーシングドライバーにも撮影協力を仰いだのだとのこと。
その後1973年にはシグマ・オートモーティブが日本製のマシンとエンジンによるレーシングカーで日本チームと日本人ドライバーによる初のル・マン24時間レース参戦を果たし、それをきっかけに日本とル・マン24時間レースの関係が次第に強くなることになった。日本チームが世界に挑戦することによって、ル・マンの名前がより日本人の記憶に深く刻まれるようになったのだ。
ちなみに、日本製エンジンがル・マンで最初に使用されたのはそれよりも早く、1970年にマツダのロータリーエンジン「10A」がシェブロンに搭載されてレースを走っている。
この時使用されたのはシグマ・オートモーティブ製のMC73で、エンジンはマツダのロータリーエンジン「12A」を搭載して初めてのル・マンに挑んだが、トラブルによってリタイアとなってしまった。
この初参戦後、日本メーカーによるル・マン24時間レース参戦が盛んに行われるようになり、1991年にはマツダ787Bが日本車初の総合優勝を達成した。しかし残念ながらその後日本メーカーの総合優勝は記録されていない。
「栄光のル・マン」はモータースポーツ好きのスティーブ・マックイーンが実際のル・マン24時間レースが開催されているサルト・サーキットで撮影された。
ストーリーは、スティーブ・マックイーン演じるデラニーの駆るポルシェ と、ライバルのスターラーが乗るフェラーリがル・マン24時間レースを舞台にレース終盤まで激しいバトルを展開。
先行車を追いかけながら、ついに24時間の最終周へと勝負はもつれ込んだ。過酷な状況の中、生死をかけたレースの中で繰り広げられる人間ドラマはモータースポーツを描いた最高傑作のひとつ。
その後に作られたトム・クルーズ主演の「デイズ・オブ・サンダー」(1990年 公開)や、1976年F1シー ズンのニキ・ラウダとジェームス・ハントを描いた「ラッシュ/プライドと友情」(2014年 公開)など、レースを舞台にした映画の先駆けとなった。
【「栄光のル・マン」が日本車初参戦のきっかけだった】
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